用語解説 ま〜わ

あ〜こ さ〜と な〜ほ ま〜わ


マイクロカウンセリング(microcounseling)

 アメリカのカウンセリング心理学者アイビイらによって開発された、カウンセリ
ングの訓練及び実践のための体系的方法です。既成のカウンセリングや人間関係
の中からあみ出された技法のユニットを階層表として構成しており、これを一歩
一歩系統的に学習し、実際の面接においては、これらの技法を有効に組み合わせ
て用い、統合をはかります。
 階層表は、1)かかわり行動 2)開かれた質問、閉ざされた質問 3)クライエント
観察技法 4)はげまし、いいかえ、要約 5)感情の反映 6)5段階の面接構造
7)対決と発達状態の査定 8)焦点のあて方 9)意味の反映 10)積極技法と方策
11)技法の統合 12)独自のスタイルと理論を決める となっています。
マイクロカウンセリング技法は、初め、カウンセラーの養成を狙いとしていまし
たが、今では教育、医療、企業などにおける人間関係の訓練にも応用されていま
す。(38号)



森田療法(Morita therapy)

 1920年頃に森田正馬(まさたけ)が創始した、神経症に対する心理療法で、内
観法とともに日本独自の療法の一つです。治療は第一期から第四期に分けられ、
基本的には40日間の入院生活でおこないますが、それ以上の日数をかけて治療す
ることも多くなっています。

 第一期(四日〜一週間)は不安をあるがままに受容することにより、本来持っ
ている治癒力に目覚めさせようとする期間です。患者は個室に隔離され、食事や
排便など基本的な行動以外はすべての刺激が禁じられます。

 第二期(三日〜一週間)は軽作業が許される期間で、病状によって内側に向か
っていた視点を外界に向けさせます。交際、談話、外出は禁止されますが、昼間
は必ず戸外に出て、日光や空気に触れるようにします。

 第三期(一〜二週間)は日常と変わらない作業をする期間です。畑仕事、大工
仕事、台所仕事をおこない、スポーツや読書も許されます。

 第四期(一〜数週間)は社会復帰の準備期間です。外界の変化に順応するため
の訓練をしながら、病院から学校や会社へ通います。

治療として日記指導、講話、個人精神療法、集団精神療法などもおこなわれます。



勇気づけ(encouragement)

 アドラー心理学の中心的技法で、クライエントの気づきを促すため、「勇気づ
け」としてさまざまなアドバイスを与えます。広義には、セラピストとクライエ
ントとが常に相互尊敬・相互信頼にもとづく交友的協力関係の雰囲気にあること
を言います。狭義には、クライエントの人格や行動の肯定的な側面に着目して自
己受容を援助することをいいます。

 勇気とは、リスクを引き受け困難を乗り越える力、他者と協力できる能力とさ
れていますから、これらの能力を持てるように援助することが勇気づけです。
アドラー心理学では、「ほめる」ことに代わる「勇気づけ」が奨励されています。
ほめることは、相手が自分の期待していることを達成したときに(条件付き)、
一種の褒美として行為をした人に対して与えられますが、「勇気づけ」は、相手
が期待を達成したときばかりでなく失敗したときも(無条件)、ありのままの相
手に共感する態度で、行為に対して与えられます。(65号)


来談者中心療法(client-centered therapy)

 ロジャースが提唱した、人間学的理論に基づくカウンセリングの基礎的な概念
で、クライエント中心療法、非指示的療法、パースン・センタード・アプローチ
も同じことです。もともとカウンセリングは、職業適性相談など相談助言から始
まったのですが、ロジャースの非指示的カウンセリングの登場によって、助言指
導を超えた心理療法としてのカウンセリングが大きく発展したのです。
 ロジャースは、自己概念と経験の不一致を不適応の状態と考え、それがカウン
セリングを通して一致していく過程を特に問題にしました。そして、クライエン
ト自身の成長や適応の力を信頼し、クライエントが自らの道を見いだしてゆくた
めに、クライエントの主導性にゆだねることを基本にしました。
 ロジャースは、カウンセラーとクライエントの関係の中で心理治療過程が起こ
るための条件として、カウンセラーの自己一致、クライエントに対する無条件の
積極的関心、共感的理解などをあげています。
 我が国でも、戦後ロジャースが紹介されて以来、カウンセリング界の主流をな
す発展をしています。個人カウンセリングのみならず、グループアプローチにも
ロジャースの「エンカウンター・グループ」の発想が主流をなしているといって
もよいでしょう。 (23号)



連想語検査(word association test)

 100個の刺激語を被験者に提示して、その語から連想する言葉を求めるテストで
その反応時間、反応様式などを分析してその人の持つコンプレックスを浮き彫り
にします。
 ユングはこの連想実験によって無意識の心的過程の研究を行い、連想を妨害
するもの、すなわち意識の制御の及ばない心的過程の存在を認めざるを得ないと
考えました。そして、その現象を引き起こす、何らかの感情によって結ばれている
心的内容の集まりをコンプレックスと名付けたのです。
 コンプレックスは劣等コンプレックス、マザーコンプレックス、エディプスコン
プレックスなどが有名ですが、ユングは自我によって受け入れられずに抑圧された
経験と、個人の中の無意識のなかに内在していて、意識化されたことがない内容に
分けています。
 コンプレックスは自我の統合性を乱しますので、カウンセラーを目指す人は
コンプレックスの構造や現象を自我との関連性において理解するために、被験者
となってこの検査をしてみることは価値があると思います。(16号)



臨床心理士(clinical psychologist)

 臨床心理士は、(財)日本臨床心理士資格認定協会が認定している資格です。
アメリカやカナダのような国家資格にはまだなっていませんが、スクールカウン
セラーには臨床心理士を任用するように規定されるなど、心理職に就くためには
必要な資格になりつつあります。平成13年3月末現在の認定者数は約8000人です。
 受験資格は厳しく、特例はありますが、一般的には指定大学院を卒業し、一定
期間の臨床経験が必要条件となります。資格取得後も、認定資格制度の質を高め
るため、5年ごとに研修会の参加や研究論文の発表などが義務づけられています。
 臨床心理士とは、臨床心理士資格審査規定で次のように成分化されています。
「臨床心理士は学校教育法に基づいた大学、大学院教育で得られる高度な心理学
的知識と技能を用いて臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助及びそ
れらの研究調査等の業務を行う」
 主として病理を対象とする臨床の分野では将来必須の資格となるかもしれませ
んが、人間関係を主とするカウンセリングの分野では必ずしも必須の資格とはな
らないのではないかと思います。臨床心理士と心理カウンセラーの棲み分けがな
されるのではないかと考えています。
この項は、次の本を参考にしました。
(財)日本臨床心理士資格認定協会監修「臨床心理士になるために」第14版
誠信書房発行(20号)



ロールプレー(roleplay)

 「特定の役割を意識的におこなうこと」で、カウンセリングでは学習者が相互
にカウンセラーとクライエントの役割をとって、面接の実習をおこなう方式がと
られます。現実の場面を模擬的に演じるので限界はありますが、体験を重ねると
自分への気づきも深まります。いろいろと試みて、失敗するということに意義が
あり、とにかく経験することが大切です。
 ロールプレーは面接の訓練法としてだけでなく、サイコドラマ(心理劇)をは
じめ、ゲシュタルト療法、論理療法、行動療法などさまざまな心理臨床場面に応
用されています。一般企業でも、販売シミュレーションや新人研修として利用さ
れています。(29号)



論理療法(rational-emotive therapy)

 アメリカの臨床心理学者アルバート・エリスによって提唱された療法で、認知
行動療法の代表例。感情志向の来談者中心療法、行動志向の行動療法に対して、
思考にアプローチして、結果的に行動を変えようとします。自己の信念・受け取
り方を事実に基づいた論理的・合理的なものへ書き替えるよう指導する自己説得
療法です。
 たとえば、「私はいつも人から好かれていなければならない」という考えに固
執している人は、人から好かれないという事態が生じると落ち込んでしまいます。
「いつも人から好かれていなければならない」という思考は、実際には不可能で
あり、非現実的なので、「私はいつも人から好かれるにこしたことはない」ある
いはもっと進めて、「私は人に好かれたいと思っているが、いつも好かれるとは
限らないし、たとえ嫌う人がいたとしても、それで自分がダメな人間であるとい
うことにはならない」という考えに改めるよう、アドバイスされます。(28号)



わたしメッセージ(I-message)

 親業・教師学で提案されているコミュニケーションの方法の一つで、「あなた
は〜だ」というあなたを主語にする「あなたメッセージ」に対して、私を主語に
して、相手のしている事実、自分に対する影響、自分の感情を伝える表現方法で
す。相手の受け入れられない行動を変えようとするとき、「あなたメッセージ」
では非難のメッセージとなり、相手は反発したり、惨めな気持ちを味わってしま
いますが、「わたしメッセージ」では相手が受け止めやすく、自ら行動を改めよ
うとする気持ちが生まれます。

 子供達が騒いでうるさいとき、「あなたたち、ちょっとうるさいわよ。静かに
してくれない。」というのが、あなたメッセージです。「あなたたちに騒がれて、
お母さん、集中して本を読めなくて困るの。」というのがわたしメッセージです。
(66号)