用語解説 さ〜と

あ〜こ さ〜と な〜ほ ま〜わ



サイコドラマ(psychodrama)

 モレノによって創始された、脚本のない即興劇による集団心理療法。基本的に
監督、主役、補助自我、舞台、観客の要素が必要とされます。主役は自らの問題
を舞台で演じ、監督は主役に共感しつつ展開を観察し、劇を創造的に発展させる
役割を担います。補助自我は、監督と連携し、主役の内的世界の無理のない表出
を促進させます。観客はサイコドラマにおいては不可欠な要素で、この観客と演
者のあいだに起こる相互交流にこそ演劇行為の本質があり、それゆえ演劇は治療
効果を持つとされます。
 日本でも心理劇として発達し、教育、看護、福祉、産業などの分野で広く利用
されています。また、カウンセリングの分野でも、アクション・カウンセリング
として行なわれるほか、エンカウンター・グループやゲシュタルト療法にも取り
入れられています。サイコドラマの活動では、他との関わり、自己成長が目指さ
れます。(35号)



催眠誘導法(hypnotic induction method)

 催眠とは覚醒レベルが下がり、被暗示性が極度に高まった人工的な状態です。
この催眠状態に誘導するための技法が催眠誘導法で、一連の暗示の系列から成
っています。
 初めは比較的反応が起きやすい、振り子法、身体の動揺法などの誘導法を用
い、次に観念運動や筋肉の硬直・弛緩反応を起こす暗示を用いると段々に深く
誘導されていきます。
 催眠の深さには大きく分けて、運動支配(目が開かない、イスから立ち上が
れない、腕が自然に上がるなど)、知覚支配(幻覚・幻聴が現れる。味覚が変
わる。痛みを感じないなど)、記憶支配(催眠中のことを忘れる。人格変換を
おこす。年齢退行をおこすなど)の三つがあります。どの程度の深さまで入れ
るかは人によって異なり、運動支配は95%、知覚支配は75%、記憶支配は45%の
人が入れると言われています(数値は説により異なりますが、この数値は守部
昭夫氏によります)。男性よりも女性、大人よりも子どもの方が催眠にかかり
やすいと言われています。私は小学生の自分の子どもたちで練習していますが、
非常によくかかります。
 心理療法としての催眠は、夜尿、乗り物酔い、チック、不眠、いらいら、不
安・恐怖症状、うつ状態などの軽減・除去に有効で、即効性はあるものの、長
期にわたるとクライエントとの依存関係を生じるとされています。個人的には
自立訓練法、自己催眠を身につけてもらうために利用したいと思っています。
(21号)



自律訓練法(autogenic training)

 自律訓練法は、セルフコントロールによる心身弛緩法です。手足の重い感じ、
手足の暖かい感じ、心臓や呼吸がゆったりしている感じなどを受動的に感じる
訓練をします。これを自分自身でおこなうため、催眠のような依存性が生じる
ことがありません。自律状態になると感情の沈静化、自律神経系の安定が得ら
れるので、不安や緊張に伴う神経症や心身症の治療法として用いられます。
また、一般的な心身の健康法あるいはストレス緩和法としても用いられています。
 自律訓練法は独立した治療法として広く用いられていますが、自律状態は変成
意識状態・アルファ脳波状態でもあり、催眠による誘導状態、瞑想状態などとも
共通しています。従って、催眠、瞑想、霊感・超能力開発、記憶法、成功法など
変成意識状態を利用する方法には、自律訓練でおこなわれている方法が導入部分
でよく使われています。といっても、自律訓練法は催眠の研究から生まれたもの
ですから、おおもとは催眠なのでしょう。(14号)



心気症(hypochondriasis)

 心身の些細な不調に過敏になり、その不調にいちじるしくとらわれる症状です。
また、検査によって異常がないのに病気への強い不安が去らず、医師や周囲の人
へ執拗に訴え続けます。

 疲れやすさ・睡眠障害などの全身症状、頭痛・めまい・熱感などの感覚症状、
動悸・呼吸困難などの呼吸・循環器系症状、食欲不振・胃痛などの消化器系症状
などが訴えられます。不安な気持ちでこのような症状に注意を集中する結果、た
とえ正常な身体感覚であっても、普通以上に症状が強く感じられるようになりま
す。そしてこの症状にこだわり、とらわれた状態に陥ると、他のことに関心が向
かわなくなり、ますます症状に心が奪われるという悪循環が生じてしまいます。 

 疾病恐怖は誰にでもあるものですが、検査を受けて異常のないことがわかれば、
その不安や恐怖はなくなるのが普通です。心気症では徹底的な身体検査によって
異常がないことを医師から再三説明されても納得せず、癌や心臓病、エイズでは
ないかとの強い不安が去りません。

 治療は薬物療法と心理療法があります。本来心理的原因から症状が現れている
ため、薬物療法で症状を完全に取り除くことは非常に難しいのです。また、病気
を強く信じているため、心理療法に対しては抵抗を示し、屈辱感や怒りを覚える
ため、治療者との間に信頼関係を作るのが難しく、治療は難航しがちです。

 心理療法としては、森田療法や精神分析的療法が用いられますが、病気が否定
されたり、気のせいだと言われて、「わかってもらえない」という気持ちがより
いっそう「症状」にしがみつかせますので、「受け入れる」という態度が周囲に
必要です。その意味ではカウンセリングも有効だと思います。



神経症(neurosis)

 一般にはノイローゼと言われているもので、不安・過労・精神的なストレスな
どによって精神面や身体面に症状をおこします。精神病のような器質的な障害は
ありません。現れる症状によって次のようなものがあります。

不安神経症:突然不安発作が起きます。その際、呼吸困難、動悸、めまい、吐き
気などの自律神経機能の異常や、自分がどうなるかわからないという恐怖感、死
ぬのではないかという恐怖感などの症状が伴うことがあります。また、発作が起
きるのではないかという不安のために外出できなくなることもあります。

強迫神経症:手を何度も洗わないと気がすまない、戸締まりを何度も確認しない
と不安がおさまらない、あるものの数を数え上げないと気がすまないなど、自分
でもばかげていると思っていながら、やめようとすると返って一つのことに強く
執着し、何度も同じことを繰り返してしまいます。

恐怖症:強迫状態で不安が特定の対象にまつわりついて起こり、実際には恐れる
必要がないのに強い恐怖を感じてしまいます。恐怖の対象によって、対人恐怖、
不潔恐怖などがあります。

ヒステリー:運動麻痺・知覚麻痺・失神などの身体症状、芝居がかった言動や健
忘などの精神症状が現れます。

神経衰弱:慢性的な不安により精神が疲れ切った状態で、注意力が散漫になった
り、記憶力減退、不眠、頭痛などの症状が現れます。(54号)



心身症(psychosomatic disease)

 心が原因となって身体症状が現れる病気。身体症状が主で、その診断と治療に
は心理的な配慮が必要な病態をいいます。学校に行きたくない子供が腹痛を起こ
したり、頭痛を起こすことはよく見られますが、仮病でなく心理的なストレスに
よって本当に腹痛や頭痛を起こすことがあります。このように心のはたらきが意
識されずに、身体に症状が現れるのが心身症です。
 
 心身症の症状の一例として、本態性高血圧(循環器系)、過敏性大腸症候群
(消化器系)、過呼吸症候群(呼吸器系)、夜尿症(泌尿器系)、不妊症(生殖
系)、偏頭痛(神経系)、慢性関節リウマチ(骨・筋肉系)などがあります。
従来は内科で扱われてきた病気ですが、心療内科ができてからは心身両面からの
治療がおこなわれるようになりました。

 心身症になりやすい人には、辛いことがあっても自分の感情を抑えて我慢した
り、他人の顔色や言動を気にする適応過剰の傾向がみられます。(56号)



深層心理学(depth psychology)

 様々な心の働きを無意識という概念で説明する心理学。「無意識」という言葉
を初めて使ったのはフロイトですが、このフロイトの精神分析やアドラー、ユン
グの心理学が深層心理学に含まれます。
 深層心理学では、1)心理現象は原因がなければ起こらない 2)行為と感情を引
き起こしているのは無意識的なものである、という立場をとります。カウンセリ
ングやセラピーでは無意識という概念を使用しないものが多いのですが、深層心
理学の見地から、クライエントの語る直接的な言葉の裏に隠された感情に気づき、
背後にひそむ問題を掘り下げて行くということはよくおこなわれます。
 ひところ流行った「ココロジー」という心理ゲームは深層心理学を応用したも
のですし、テレビや雑誌などで盛んにおこなわれている性格占いや夢占いなども
ほとんどが深層心理の世界を利用したものです。(50号)



心理学〜臨床心理学(psychology)

 心理学はアプローチの仕方の違いで、「知覚系」「認知系」「発達系」「医療
系」「応用系」の五つに分けることができますが、これらは相互に関係を持ちな
がら、複雑な体系を作っています。この相互関係については、別冊宝島279「心
理学・入門」でわかりやすく説明されています。
 心理学の種類を羅列することはあまり意味がないことのようにも思えますが、
臨床心理学が多くの心理学の中のほんの一分野でしかないことを理解するために
あえて、羅列してみます。(アプローチの仕方の違いによる分類です)

知覚系:感覚心理学、実験心理学、知覚心理学、生理心理学、動物心理学、神経
 心理学
認知系:認知心理学、学習心理学、思考心理学、行動心理学、言語心理学、生態
 心理学
発達系:発達心理学、神経生理学的発達理論
医療系:精神医学、反精神医学、精神病理学、臨床心理学、犯罪心理学、性格心
 理学、精神分析、ユング心理学、自己心理学、対象関係論
応用系:産業心理学、広告心理学、色彩心理学、交通心理学、環境心理学
その他:教育心理学、幼児心理学、児童心理学、青年心理学、社会心理学、認知
 的社会心理学
その他にも○○心理学と名の付くものはたくさんあります。

臨床心理学は、元々「臨床」つまり死の床に臨むという意味からもわかるように
心や行動が病的な状態の人々を対象に発達してきたのですが、今では病的とは言
えない不適応や悩みなど心の問題を広く扱うようになってきており、臨床実践か
ら生まれた深層心理学、自己心理学、催眠心理学などと深く結びついています。
臨床心理学には心理的アセスメント(査定)、心理療法、コミュニティ心理学など
の実践的領域があります。(19号)



心理テスト

 人の心の状態を知るためのテストで、様々な種類があります。テストの仕方で
分類すると、アンケート形式で質問に対して「はい」「いいえ」で回答する質問
紙法、作業をさせてその経過や結果から判断する作業検査法、曖昧な刺激に対し
てどのように反応するかをみる投影法があります。
 質問紙法の矢田部ギルフォード性格検査(YG検査)、作業検査法のクレペリ
ンテスト、投影法のロールシャッハテストは代表的なものです。質問法は意識レ
ベルの心の状態がわかりますが、被験者が自分を客観的に評価できる能力がなけ
ればならず、作為的な応答による歪みを排除しにくいことが欠点です。作業検査
法は前意識レベルの心の状態がわかりますが、心を多面的にとらえることが難し
く、評定の曖昧さや不確実さを伴います。投影法は無意識レベルの心の状態がわ
かりますが、応答を客観的・数量的に処理しにくく、実施には熟練を要します。
また、解釈の際、主観が入りやすいという欠点があります。
 心理臨床の現場では、現在のパーソナリティーがどのような状態にあるのか理
解するために、いくつかの心理テストを組み合わせてそれぞれの心理テストの欠
点を補いながら利用されています。



ステレオタイプ(Stereotype)  

特定の社会で共通に受け入れられている、単純で誇張された固定的なイメージ。
個人が持っている偏った見方が、その集団で共通にみられるとき、ステレオタイ
プとなります。従って、その社会が持っている偏見の一種ということもできます。

日本人は外人に対して、足が長く、青い目をして英語をしゃべるというイメージ
を持っていますが、これがステレオタイプです。アメリカ人が日本人のことを、
背が低く、メガネをかけて首からカメラをぶら下げていると思っているとすれば
それもステレオタイプです。

男、女、アメリカ人、日本人などそれぞれの集団で、ある傾向があるということ
は言えますが、一人の人間をとったとき、それがそのまま当てはまるわけではあ
りません。背が低く、黒い瞳の英語がしゃべれないアメリカ人もいますし、逆に
英語をペラペラしゃべる白人の日本人もいます。

個人を大事にしようとするとき、ステレオタイプ的な見方は障害になります。目
の前にいる人をあくまで自分の感覚で正確に感じ取ることが必要でしょう。(63号)


精神分析(psychoanalysis)

 ジークムント・フロイトによって創始された心理学で、無意識という概念を仮
定して人間の心を探求する研究方法(精神分析的方法)、この研究を基にしてお
こなわれる心理療法(精神分析療法)、これらの研究と経験から得られた結果を
まとめた心理学、精神病理学の理論体系を総称していいます。
 フロイトは、人間の基本的な動因として性本能を重視し、無意識・葛藤・防衛
機制などの心的現象を説明しました。また、これが神経症のメカニズムであると
考え、自由連想法・夢分析・転移分析などの治療法を生み出しました。
 その後、精神分析は性本能中心の見方から自我心理学、対象関係理論などに発
展し、治療対象が拡大されただけでなく、広く社会や文化の理解にまで影響を与
えています。今や、潜在意識あるいは無意識の存在は常識になっていますね。(31号)



ソリューション・フォーカスト・アプローチ
(solution focused approach)

 もともとはアルコール・薬物依存症の治療のために始められたセラピーで、ブ
リーフ・セラピー(短期療法)の流れの中に位置する、問題解決志向型セラピー
の一つです。過去の原因や現在の状況に焦点を合わせず、問題の解決のみに焦点
を合わせます。クライエントは問題を解決する力を持っていると考え、どんな些
細な改善でもそれを拡大し、問題解決に結びつけます。クライエントとの会話は
意図的に進められ、独特の質問が多用されます。
 ソリューション・フォーカスト・アプローチの原則として、次のことがあげら
れています。(スコット・D・ミラー、インスー・キム・バーグ著白木浩二監訳
「ソリューション-フォーカスト・アプローチ」金剛出版より抜粋)
1.すべての人に有効な唯一のアプローチなど存在しない。
2.解決方法は、数多く存在している。
3.解決と問題は、必ずしも関係があるとは限らない。
4.もっとも単純で侵害の少ないアプローチが、多くの場合最高の治療である。
5.人間は、短期間でよい方向に変化することができるし、変化している。
6.変化は、いつでも起こっている。
7.弱さや欠点ではなく、強さとリソースに焦点を合わせよう。
8.過去ではなく、将来に焦点を合わせよう。


タイプA(type A)

心臓病を引き起こしやすいといわれる行動パターンを持つ人のこと。
心臓発作を起こした人の中には、喫煙、食事、運動習慣などの原因が見あたらな
い人が多くいるのですが、これらの人たちを詳細に調査した結果、共通する行動
パターンが発見され、この行動パターンを持つ人をタイプAと名付けたのです。
タイイプAの特性としては次のようなことがあげられます。
●せっかちで短時間により多くのことを達成しようとする。
●業績の数でパーソナリティーの評価をしようとする。
●過剰な敵意・攻撃性を持ち、必要なら他人の反対に逆らってでも行動する。
●大声で早口に話し、行動のテンポが早い。など
これらはアメリカで調査された結果ですが、日本人的なタイプA行動パターンと
しては、アメリカよりも表面的な敵意生は低いとされ、執着的で仕事への集中傾
向が強いことがあげられます。いわゆる企業戦士やモーレツ人間によく見られる
行動パターンです。この行動パターンとまったく正反対の人がタイプBです。
タイプAを単なる神経症的パーソナリティ障害とみる学者も多くいます。(51号)



ダブル・バインド(double bind)  

 ベイトソンの分裂病のコミュニケーション研究から発見された、家族内のコミ
ュニケーション・パターンで、矛盾する二つの否定的なメッセージが出され、二
重に縛りつけられたような身動きが取れない状態。

 たとえば、母親が子供に対して日頃「嘘をつくのは良くない」ということを言
っていながら、いたずらをしたときに子供が正直に話すと怒ってしまうという場
合、子供は嘘をついてもいけないし、正直に話してもいけないという二重の拘束
を受けることになります。さらに、親の言うことは聞かなくてはいけないという
メッセージを受けると、まったく身動きが取れないダブル・バインドの状態にな
ってしまいます。

 メッセージはことばだけでなく、態度や表情でも伝わりますので、ことばとこ
れらのノンバーバルなメッセージが矛盾して、ダブル・バインド状態を作り出す
ことが多くあります。(61号)



超心理学(parapsychology)

 テレパシー、透視、予知、念力などの超能力、占い、心霊現象など従来の心理
学では扱わない現象を心の働きとして研究する心理学。自然科学の知識に基づい
た従来の心理学では、自然科学の原理を越えたこのような分野は宗教とともに研
究対象とされてきませんでしたが、自然科学に反するものとして科学界との対立
はあるものの、心理学界との目立った対立はありませんでした。むしろ、死後の
世界や宇宙空間、あるいは過去生などのイメージ体験を大切にするトランスパー
ソナル心理学へと心理学の枠は広がり、超心理学に近づいています。

 不幸なできごとを霊障としてとらえ、祈祷や霊能者による浄霊がおこなわれて
いる様をテレビでよく放映していますが、これもセラピーの一種とみなせます。
従来の心理学では、原因を本人が納得しやすい形に外在化するということで説明
されますが、セラピーとしての機能からその現象そのものを認め、逆に新しい体
系を作り出そうとしているのが、超心理学です。インチキや手品も多いため、私
自身はテレパシーに類するもの以外はその存在を信じていません。(64号)



統合失調症(schizophrenia)

 最近まで「精神分裂病」と呼ばれていましたが、偏見や差別的なイメージを連
想させるため、平成14年の精神神経学会で「統合失調症」と呼ぶことになりまし
た。原因は今でもよくわかっておらず、複数の要因が重なって発病するのではな
いかと言われています。脳内の神経伝達物質のバランス異常があることではあら
かた一致しています。10代後半から20代前半で発病することが多く、100人に1人
位の割合で時代や国を越えて発生しているポピュラーな病気です。

 症状としては思考傷害(滅裂思考、妄想)、感情障害(無表情、閉じこもり、
強い不安・緊張・怒り)、意志・欲動傷害(独り言、独り笑い、奇妙なしぐさ、
衝動行動)、自我傷害(自己喪失感、他人から操られる感じ)などがありますが、
症状の現れ方は千差万別です。病気の始まりは、明らかに統合失調症であるとわ
かるものから、性格が少し変わったかなと思われるものまで、実にさまざまです。
うつ病や神経症とまぎらわしいこともあり、注意が必要です。

 治療は楽物療法とレクリェーションや生活技能訓練などのリハビリがおこなわ
れます。心理療法は単独でおこなわれることはあまりありませんが、家族療法が
注目されています。



トラウマ(心的外傷:psychic trauma)

 人が普通に経験するできごとの範囲を超えた、強烈な恐怖・絶望・無力感などの
体験によってもたらされた心の外傷。適切に対処ができないほど衝撃的なその体
験は、無意識下に抑圧されて長期にわたって障害をもたらすことがあります。
事故、虐殺、レイプ、戦争体験などトラウマとなり得る原因は様々ですが、その
経験がトラウマとなるかどうかは人により異なります。
 最近は、一般にもトラウマという言葉がちょっとしたブームになっており、忘れ
られない心のキズという程度の軽い意味で多用される傾向にあります。



トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)

 人間性心理学のアブラハム・マズローとトニー・スティッチ、ホロトロピック・
セラピーを開発したスタニスラフ・グロフが中心となって確立された「第四の勢
力」と呼ばれる心理学です。「第一の勢力」とは、人間の精神の病理的な側面に
注目するフロイトの精神分析、「第二の勢力」とは、人間の生物機械的な側面を
追求する行動主義心理学、「第三の勢力」とは、人間の潜在的可能性に着目し、
自己実現をめざす、マズロー自身が唱えた人間性心理学です。
 トランスパーソナル心理学は、ユング心理学やマズローの人間性心理学をさら
に発展させたもので、死後の世界や宇宙空間、または母胎への回帰から前世にま
で戻るイメージ体験を大切にします。宗教と科学の接点を探求するニューサイエ
ンスともかかわっており、アメリカで生まれた新しい思想としても注目されてい
ます。現在では、ユング心理学の学者がトランスパーソナル心理学に多数関わっ
ています。
 私も、トランスパーソナル心理学の一つであるプロセス指向心理学は、ぜひ取
り入れたいと思っています。(33号)