心意雑感 

サイコロネットメールマガジンに掲載された、心に関する雑感です。

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No31〜No40

「認知療法による自分を愛するプログラム」   H14年4月1日 第31号に掲載

 3月24日の定例研究会は10名の参加者を予定していたのですが、実際には講師を含め3名の参加者しかありませんでした。前回の続きをおこなうことになっていましたから、前回出席者に何名か新しい人を加え、10名位だろうと予想したのですが、来てくれたのは、まったく初めての方2名だけでした。前回出席者にはそっぽを向かれた形となりました。何よりも、会費を最低限に抑えているため、2名の参加者では会場費をまかなうこともできない大赤字となりました。

 このような場合、もしあなたが主催者だったらどのように感じるでしょうか?来てくれなかった人に怒りを覚えたり、自尊心を傷つけられて落胆したり、自分の能力のなさに劣等感を感じたり、他人に知られたら恥ずかしいと思ったりする人もいるのではないでしょうか。今回はせっかく「認知療法による自分を愛するプログラム」というテーマでセミナーをおこなったのですから、これをケースとして認知療法ではどのように考えるか少し解説したいと思います。

 認知療法では、感情と思考と行動には密接な関係があり、思考を変えることにより感情が変わり、その結果、行動も変わると考えます。すなわち、「怒り」という感情の陰には、たとえば、「人は自分の思い通りに動くべきだ」「自分の予想は当たるべきだ」などという歪んだ信念があるかもしれません。すると、その通りにいかなかったときに怒りを覚えてしまいます。そこで、歪んだ思考を「人が自分の思う通りに動いてくれれば嬉しいが、思い通りに動かないときもある」「予想というものは当たることもあるけれど、当たらないこともある」というような考えに改めれば、その通りにならなくても怒らずにすみます。カッカすればものごとがうまく行かなくなることがよくありますが、これが防げるわけです。

 同様に、自尊心を傷つけるような感情から歪んだマイナス思考をみつけ、その考え方をプラス思考に変える作業をおこなうことで自尊心が取り戻せるようになるのです。ただし、マイナス思考は長い間の経験から自動的におこなわれてしまい、なかなか自分では気づくことができません。それゆえ、このようなワークを企画したのです。ちなみに私自身は、プラス思考が自動的におこなわれているようなので、それほど動揺を感じることはありませんでした。(佐々木)



 

「不快の選択」   H14年4月16日 第32号に掲載

  最近、また幼児の虐待が頻繁に報道されていますが、泣きやまなかったから殴っただとか、言うことを聞かなかったから躾のつもりで折檻したなどという言い訳が決まって聞かれます。何もできない幼い子供に暴力をふるうということ自体言語同断ですが、私は自分を不快にさせる原因が子供の方にあるという考え方にも注目したいと思うのです。

 ほとんどの人は、自分が不快な気分になったときに不快な原因が外部にあるはずだと思ってしまい、自分が不快な気分を選択していることに気づいていません。それは、長いあいだの経験から、力によって相手を動かせるという誤った信念が植え付けられているからではないでしょうか。それは、社会では強い者が命令を下し、弱い者はそれに従うということが当たり前になっており、子供に対してもそうなるはずだと思いこんでしまうからでしょう。もちろん、そこには、自分の思い通りにならないことを我慢できないという幼児性の問題もありますが...

 カウンセリングを勉強すると、人は動かせないものだということに気づかされます。こちらの思い通りに動いてくれるのは、たまたま相手が条件付けられていて、それを選択してくれているだけなのです。カウンセリングで言えば、カウンセラーがクライエントを癒すのではなく、カウンセラーとの関係の中でクライエント自らが癒されていくということなのです。

 グループワークでは、時として不快に感じる人がいるかもしれませんが、こんな時こそ、自分で不快を選択しているということ、そして人は自分の思い通りにならないということに気づくいいチャンスではないでしょうか。(佐々木)



 

「子供の能力について」   H14年5月1日 第33号に掲載

 私は、小学校4年の息子と小学校2年の娘にパソコンを自由に使わせているのですが(といっても時間制限はありますが)、結構、小さい頃から適当に操作して、遊んでいました。最近は、インターネットで調べものをしたり、チャットを楽しんでいるようです。上の子は、フリーのホームページも作っているようです。子供は覚えるのが早いので、機械音痴の家内に時々操作のし方を教えたりもしているようです。

 別段、この程度のことでは驚かないのですが、最近、下の子がブラインド・タッチで遊戯王カードのタイトルをメモ帳に入力しているのを見てしまったのです。ブラインド・タッチですよ。キーボードを見ないで、入力しているんです。まだ、思いだし思いだしで、とても遅いんですが、びっくりしてしまいました。誰に教わったわけでもなく、誰にやれと言われたわけでもないのに、見ていたら自然にできるようになったと言うのです。もちろん、私がこういう原稿をブラインドタッチで入力するのを見ていてです。上の子にやらせてみると、さすがにもっと早くブラインド・タッチで入力できていました。上の子は学校で教わったと言っていましたが、私には思いもよらないことでした。私はといえば、会社に入ってから、タイプライターで練習したのです。それも、教則本を使って、必死になって練習したのです。
 
 タッチ・タイプの練習ソフトなんてものもありますが、そんなものは全然必要ない。ただ、見ていたらできるようになった。これはどういうことでしょうか。門前の小僧とはよく言ったものですが、子供は習わなくても、できるようになるもののようです。子供が自ら必要としていることは、それを与えてあげるだけで、どんどん吸収してしまいます。むしろ、大人が子供に対して、難しさを教えてしまうから、できるものもできなくなる、そんな風にさえ思えます。子供の能力に対する無限の可能性を感じ、教育の原点はここにあるのだと思った次第です。(佐々木)



 

「心のケアの新ビジネス」   H14年5月16日 第34号に掲載

 精神対話士についての質問があり、心のケアのビジネスについて考えていたところ、5月15日付けの読売新聞に「カウンセラー育成、あいおい損保参入」という見出しでいよいよ大手がメンタルケア・ビジネスに乗り出してくることが報道されました。記事の要約は次の通りです。

 「あいおい損害保険は、カウンセリングサービス会社などと共同で、医療や介護の現場で患者や家族の心のケアをおこなうカウンセラーの育成をする新会社を設立した。初心者のほか、産業カウンセラーや臨床心理士などの専門家も履修でき、履修を終えたカウンセラーには、同損保の医療、介護保険の契約者や、関係が親密な介護施設などを紹介するとしている。」

 メンタルケアの分野のビジネスとしては、カウンセラーの派遣業務とカウンセラーの養成のいずれもがビジネスとなります。あいおい損保は派遣業務はカウンセリングサービス会社にまかせ、自社が抱えている潜在的なクライエントの紹介を目玉として、カウンセラーの養成事業をしようということですね。これは、メンタルケア協会のスペシャリスト養成講座の成功に刺激されていることは間違いありません。メンタルケア協会が、派遣事業の派遣先を自力で開拓しなければならないのに対して、すでに派遣先を抱えているというのは大きな強みです。

 産業カウンセラーや臨床心理士などの専門家も対象にしているというところが意味深いですね。これは、産業カウンセラーや臨床心理士といえども、人の話しを聴くプロとして十分な力があるかどうかは、別な問題であるということにかかわっています。そして、カウンセラーの供給責任という面から考えれば、初心者よりもすでに力のあるプロを供給した方が有利です。また、カウンセラーの立場としても、クライエントを紹介してもらえるというのは魅力的なのです。

 このビジネスは、見方によっては「ワープロ購入を条件として、ワープロの内職をさせる」というビジネスと同形態です。旧式のワープロを買わされた上、仕事は来なかった、ということになるのか、買ったのは最新式のパソコンで、内職も次から次へと思った以上に請け負えた、ということになるのか興味深いところです。今秋をめどに事業が始まるそうですから、注目しておきたいと思います。

 いずれにしても、メンタルケアのビジネスが日本でも本格的に始まりつつあるのを感じます。カウンセラーの出番が増え、一般的な認知が広がることを期待しています。(佐々木)



 

「カウンセリングの勉強方法について」   H14年6月1日 第35号に掲載

 このところカウンセラーになるための勉強方法について何件か質問が寄せられています。カウンセリングの勉強をしている人、これから勉強を始めようと思っている人にとっては、どのように勉強するのが一番いいのか、どうしたら資格が簡単に取れるかということに関心を持つのは当然のことだろうと思います。私も、通っている講座の先生に「どのように勉強するのが一番いいか」質問したことがあります。しかし、先生は教えてくれませんでした。自分で考えろと言うのです。「それを自分で考えることが一番勉強になる」と言いたいのだろうと思いますし、今は私もその通りだと思っています。

 しかしながら、どんな勉強方法があるかもわからない混沌とした状況の中から試行錯誤して一番いい勉強方法を見つけることは並大抵のことではありません。大抵は、たまたま出会った学校やセミナーがやっていることを信じて、勉強するしかないのでしょう。ある程度勉強してくると、他の勉強方法についてもだんだんわかるようになって、他の学校に通ったり、自分が好きなセミナーに出席するようになります。私もこのようにして勉強してきました。

 カウンセリングの勉強方法については、ある講座で次のような構成になっていることを教わりました。●講義 ●文献研究 ●ロールプレー ●サイコドラマ●エンカウンターグループ ●ピアカウンセリング ●応答構成 ●ビデオ学習

 ほかにもあると思いますが、これだけでも実に様々な勉強方法があるものですね。それぞれに良い面があるので、普通はいくつかの勉強方法を組み合わせることになりますが、できるだけその方法はたくさん持っているに越したことはありません。みなさんはどんな勉強方法をしていますか?(佐々木)



 

「サポーターの力」   H14年6月16日 第36号に掲載

 今回のワールドカップでの日本、韓国の活躍でいかにサポーターの力が大きいかということを知りました。確かに日本も韓国も力をつけてきているとは思いますが、今まで勝てなかったものが、急に負けなしで勝ち進むということは、やはり自国で試合をするということが大きく影響しているのでしょう。今までホスト国はすべて決勝トーナメントに進出しているそうですし、ホスト国の優勝も非常に多いですね。それは時差や気候、あるいは慣れということもあるでしょうけれど、サポーターの応援の力も非常に大きいのだろうと思います。サポーターは12番目の選手と言われるのもうなずけます。

 テレビでやっていたのですが、他人に大声で声援を送ってもらうと、人は普段より余計筋力が出せるようになるそうです。(自分で声を出したときの方が、もっと力が出せるようになるそうですが)サッカーの場合は、筋力を出せばいいというものではないと思いますが、広い意味での「力」も普段より出るようになるのだと思います。

 そういえば、カウンセリングも他人に対するサポートです。もちろん大声で声援を送って頑張らせるということではありませんが、目的に応じた関わり方があるということですね。サッカーにおけるサポートは、サポーターが団結して、応援していることを選手に伝えるという関わり方なのでしょう。研究が進むと応援の仕方によっても差が出てくるかもしれませんね。ちょっと楽しみです。(佐々木)



 

「学校統合をめぐる話し合い1」   H14年7月1日 第37号に掲載

 ゴミ処分場をめぐる住民と自治体とのトラブルや成田空港の反対運動など、役人の市民に対する関わり方には何か問題があるのではないかと思っていましたが、その当事者となって、実際に問題点を感じることができました。

 私の住んでいる多摩ニュータウンは25年以上前に、今は全国的にあるニュータウンの先駆けとして造られた町です。ところがバブル崩壊の影響もあって、町全体に高齢化が進み、子供が非常に少なくなってしまったのです。私の子供たちが通っている小学校は全校生徒74人、1学年が15人にも満たないのです。そこで市の教育委員会から、同様に小規模化しているニュータウン内の隣の小学校3校を統合させようという話しが持ち上がりました。

 そこで3校の保護者に対する説明会が何回かおこなわれ、保護者に対して適正な規模にすべきであることの理解を求めてきました。私たちの小学校は統合賛成ということになったのですが、他の2校は反対にまわりました。反対理由は、痴漢が出るので通学路の安全が確保できないとか、統合後の小学校の校庭が外部から見えないような位置にあるとか色々出されてはいるのですが、私の目には教育委員会の一方的なやり方に対する不信感の表れとして、感情的に反対しているようにうつりました。

 その後も、話し合いは何度かおこなわれたのですが、統合に反対している2校は、とうとう全校決議として全面的に統合反対を打ち出し、反対運動を始めてしまいました。統合に賛成な人も、活発な反対派の前では意見が言えないような状況も生まれてしまったようです。結局、教育委員会は3校統合は当面無理と判断して、3校の内の2校のみを統合するという妥協案を打ち出してきました。

 実は、ここまでの説明会の出席は妻に任せて私は出席していなかったのです。私自身は、学校が廃校になろうが統合しようが、それもまた一つの経験だと思うのでどちらでもよかったのですが、3校統合に賛成した私たちの立場は一体どうなるのだという思いもあって、説明会に出席したのです。そこで感じたことを次号でお話ししたいと思います。(佐々木)



 

「学校統合をめぐる話し合い2」    H14年7月16日 第38号に掲載

 2校統合の説明会は市教委(市の教育委員会)の関係者数名と保護者数十名、教師数名が参加しておこなわれました。2校統合案に至った経緯の説明と事前に保護者の会から出された質問の回答が市教委からあり、その後、保護者からの意見、質問が相次いだのですが、このやりとりを通して、私は統合に反対している他の2校の保護者の気持ちもわかるような気がしました。

 市教委側は、静かに意見を聞いてはいるのですが、決して受け入れないという岩のような固さを感じました。すでに結論は持っていて、その方針に合う意見は受け容れて既成事実として積み上げ、そうでない意見については必ず反論して釘を刺すというやり方で、心のふれあいを許さない、一方的な説明会であるような印象を受けました。実際は、一方的なものではなく、ずいぶん市教委の考え方も揺り動かしたと思うのですが、方針ではなく、このような態度に対して反発する人がいてもしかたがないなと思うのです。

 そういえば、長野県の田中前知事の不信任問題にも同じような状況が見られましたね。田中前知事の議会を無視した挑発に対して議会が感情的に反発し、しなくてもよかった不信任決議をしてしまいましたが、人間というものは無視されると、感情的に反発したくなるということがよくわかります。

 無視されたような気持ちが生まれるのは、自分の意見がどのように扱われたかによります。自分の意見すなわち自分の話したことを受け入れてもらえた気持ちになれば、無視された気持ちなど起こりようもありません。実はカウンセリングでいう傾聴ということがここで重要なのではないでしょうか。

 多くの人は「人の話しを受け入れる」というと「その話しを実行しなければならない」と思いがちですが、ここは全然違います。「その話しをしている人の気持ちをわかってあげる」ということなのです。議論は話しの中身の善悪について決めようとしますが、相手を説得しようと思ったら、議論でやりこめるのではなく、「反対している人の気持ちをわかってあげる」ということが非常に重要になります。これさえできれば、説得は実はそれほど難しいことではないのです。

 もちろん、反対、賛成以前に人の意見を十分聴いて受け入れていれば、このような問題は起こらないのです。官庁に限らず、企業の中でも、家庭でも、話しを聴くということが、コミュニケーションの第一歩であり、必要なことなのだと再認識させられたできごとでした。(佐々木)



 

「心霊現象とカウンセリング」    H14年8月17日 第40号に掲載

 夏になると決まって怪談や心霊体験のテレビ番組が多くなりますが、今年は特にその手の番組が多いようです。それは当然見たいと思う人が多いからでしょう。若い人の多くが幽霊はともかく霊現象の存在を信じているといいます。これは一種の社会現象になりつつあります。

 私は霊というものが存在するという期待をもって、長年研究サークルに入ったりして知識を蓄えてきたのですが、知れば知るほど嘘や勘違いの多い世界だと思うようになりました。ほとんどの現象が科学的に説明できる自然現象かトリックを使っています。これは断言できますし、どうしてそうなるのか説明することもできます。

 しかし、多くの人がその説明を受け入れようとせず、むしろおどろおどろしい世界にしがみついていたいようです。以前は、何とか非科学的な世界にいる人の誤りを指摘し、正しい認識の世界に導きたいと考えていましたが、今は、非現実的な世界や不合理な世界を信じる心や、そういう世界にしがみつかざるを得ない心を受け入れたいと思っています。

 幽霊を見やすいという霊感体質の人は現実にいますし、そのような人は肉体的にもリアルに反応します。これを単に気のせいだとか見間違いということはできません。幽霊を見た、あるいは感じたという人にとっては、確かに幽霊は存在しているのです。それゆえ、霊体験を現実のもとして認めてくれる霊能者が流行ることになるのです。

 一般的な悩みについても、同様なことが言えます。被害妄想に陥っている人にいくらそうでないことを力説してもほとんど効果がありません。その人にとっては、被害はリアルなものなのです。カウンセリングは、クライエントがどんなに誤った考え方をしていようとも、その考え方を批判することなく、そう考えざるを得ないその人の状況や気持ちを理解することから始まります。

 霊の存在を信じたいという気持ちも、甘えや依存など様々な悩みを作り出している気持ちの一つとして存在しているだけなのではないでしょうか。(佐々木)

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